選管診断とは?
選管診断は、各地の選挙管理委員会の頑張り度を独自の視点で採点し、どの程度のレベルにあるかを可視化しようという取り組みです。
やろうと思った経緯
個人的な経験値になりますが、過去2回の国政選挙(2016参議院、2017衆議院)において、期日前投票所マップの全国版を作る過程で、全国47都道府県の選管サイト全てにアクセスしました。
また、それ以外の地方選挙でも、基礎自治体である市や区を含む10箇所以上の選管ページにアクセスしました。それらのページを見ていく中で、選管によって、情報の公開性や活動に関するやる気に大きな差があると感じました。
確かに法律上は、全ての選管が定められた基準をクリアしています。しかし頑張っている選管とそうでない選管の違いが大きすぎる。その差を見える化する必要があると思ったのです。
チェックの対象は多岐に渡りますが、大きく分けて、情報公開(オープンデータ)と活動内容の2点になります。
評価軸その① オープンデータ
まず違いを見たい要素の1つが、情報公開に関する格差です。
昨年「官民データ連携法」が成立したことで、都道府県では、行政が持っている情報のオープンデータ化の推進が義務項目となりました。他に政令都市でも、その推進が努力目標となっています。さらに法的指示のない一般の市区町村に於いても、意識の高い自治体では職員や首長が率先してオープンデータに取り組んでいます。
オープンデータは、行政組織が持ってる有益な情報を、市民や企業が使いやすいデータ形式で提供・還元するという取り組みです。言葉としては未だ、一般には馴染みがないかもしれませんが、行政の取り組むべきテーマとして、その流れは待ったなしです。
しかし選挙管理委員会の場合、オープンデータに対する取り組みは、他部署以上に進んでいません。その理由は、子育てや防災や公報など他の常設されている部署とは違い、選挙の時だけ招集され、普段はさして業務活動がないという、選管の特殊な事情に一因があります。それでなくても、公選法に規定されたマストの仕事をするだけで、選挙期間は忙しく過ぎて行きます。
もう一つの問題は、部署の市民との間に接点が少ないことです。
例えば子育て系なら、保育園に子供を入れたい人からの問い合わせなど、窓口も含めて市民との接点は日常茶飯事です。しかし一般の人で、選挙管理委員会に問い合わせを入れたり相談しに行く人は、殆どいないのではないでしょうか。
市民と接点があれば、例えば保育園のデータを公開したり、地図に落として見せたりすれば、お母さんたちから感謝されます。あるいは、問い合わせが減って自分たちの仕事が楽になります。そういうメリットがあれば、やる気になる。
しかしそれは、毎日そうした業務をしているからこそ思えるわけです。選挙の時だけ一時的に頑張れば済んでしまう。問い合わせが日常的にあるわけでもない。何かやって、誰から感謝されることもあまりない。
そんな選管ですから、モチベーションが上がらなくても当然です。
そこで極めて微力ながらも、データを出せば使うし、頑張っていれば評価もするよ、というのが当サイトのスタンスです。
実際、各選管さんが公開している期日前投票所のデータを使ってマップを起こし、サイトに掲載しています。但し、データを使う方はともかくとして、評価については後回しになっていたのも事実でした。
そこで選挙情報を取りに行ったついでに、各選管さんの評価も同時にやってしまおうというのが、この企画のポイントになります。
どのように評価をするのか?
選管さんの出すデータを使うと言っても、厳密にはデータの形式によって、使いやすい/使いにくいが分かれてきます。また、それ以上に気になるモノ&欲しいモノは、多様な情報データと、そこへの容易なアクセスです。
そもそも、情報が無ければ始まりません。
>これは、何を出すかの問題ですね。
情報を出しているのに埋もれてしまっても意味がない。
>これは、情報の見せ方仕方の問題ですね。
そして情報は入手できるが使いにくい場合。
>これはデータの作り方の問題ですね。
つまり、行政さんが何らかのデータ情報を出す場合には、何を出すか、どう作るか、どう見せるか。この3点が大事になります。
評価もそれに合わせて、どんなデータが出ているか、それがどう作られているか、それは発見しやすいか?という3つの軸で行います。
例えば情報が纏まった特設サイトを作っているかどうかは、一つの大きなポイントになります。しかし、必ずしもお金を掛けて作れば良いわけではありません。第一に問われるのは、必要な情報に容易にアクセスできるか?です。
実際の採点については、下記のように考えます。
どんなデータが出ているか
公選法上マストな要素である、出馬者の届け出情報や選挙公報は、サイトに掲載されていて当たり前なのです。しかし、例えば届け出情報であれば、そこにどこまで個人情報が入っているかには差があります。その一覧を作って、どこまで書いてあるかをチェックします。
届け出情報と言っても、首長選はともかく議会選挙の方では、ちょっとした自治体であれば数十人が出馬します。その個々の情報を、一有権者が探して集めていくのは困難です。選管が公表する候補者データの中に、できるだけ多くの情報があって欲しい。
それは、必ずしも選管の手間を大きく増やす事にはなりません。出馬者は選管の求める項目に従って情報を提出し、選管はそれを纏めるだけの話だからです。つまり、出馬者に渡す書式のフォーマットを充実させれば良いだけです。
ここについては、標準的な書式の中身をアップデートしてもらう事がゴールと言えるかもしれません。
それ以外にも、例えば期日前投票所の場所について、サイトで公表をしていない都道府県の選管もあります。そうした細かい情報は市区町村の選管に聞いて下さい、ということかもしれませんが、有権者側の利便としては、都道府県単位で纏まっていた方が助かります。
他に、過去の投票率や選挙結果も、選管によって資料や情報が有ったり無かったりバラバラです。
これらについて、公開しておいて欲しい情報の項目と、それを構成する要素の一覧を作り、調査のベースにしたいと考えます。
どう作られているか
ここでいう「どう」とは、ほぼ書類のデータ形式の事になります。具体的に言うと、CSV、エクセル、PDFなどの形式です。あるいは、ページに直書きしたHTMLのテーブルや、画像である事も多いでしょう。
結論から言うと、データを二次利用する場合はCSV形式で提供されるのが一番です。次にエクセルですが、セルを結合したり、同セル内で改行があったりすると、受けっとった側の方でそれららを解消させる手間が増えます。そこでミスが発生してデータに誤りが出てしまう可能性もあります。
そういう意味では、同じエクセル書類でもシンプルな形で作られているか、余計な一手間が入っているかでは、評価は分けた方がいいかもしれません。
さらにデータ形式がPDFになると、そこからテキストを上手く抜くのが難しくなります。HTMLも同様です。画像ともなれば、自分で打ち込み直すことになります。
このように、どのタイプのファイル形式で提供されているかは、使う方にとって非常に関心の高いものとなるのです。
発見しやすいか?
同じ選挙に関するデータは、同じページで並んで紹介されているのが最良です。見やすく、見つけやすいと言えます。
特設サイトを作っている場合も、それ自体がプロモーションとなっているので、基本的には評価されます。但し、そこに掲載されている情報が少ない場合は、見かけ倒しとなります。
SNSのアカウントを持っているかどうかもポイントです。そこでの投稿を通じて情報を得ることが出来るからです。と同時に、ただ持っているだけでは意味がないので、投稿しているペースも大事ですし、情報の拡散力という面では、フォロワーの数も評価に反映させるべきでしょう。
またデータが掲載されていない場合でも、問い合わせを入れると出てくるケースもあります。そうした場合、やり取り自体は気持ち良くできる事も多いので、せっかく対応して頂いたのに申し訳ないのですが、やはり出ていない時点で、減点となるのは致し方ありません。
最後に、選管への問い合わせ方法が、電話とFAXだけとか言うのも、今の時代でナンセンスです。さすがに都道府県レベルではほぼ見かけませんが、市区町村だとまだまだ散見されます。
評価軸その②活動内容
そもそも論で行くと、選管の活動目的は何か?に行き着きます。不正や事故のない選挙の実行は勿論ですが、最近においては、投票率の向上や若年層に対する啓発運動も期待されます。
つまり、選管に求められる期待値が上がっているという事です。
やる気を可視化したい
但しそれらは、公選法に由来する、マストな業務の範囲外です。たとえ何もしなくても、それで給料や査定が下がることにはなりません。かなりの部分を「やる気」が占めます。
例えば、やる気のある一部の選管では、地域の商店街と協働で「選挙割サービス」を応援したり、学生と協働で大学生の投票率の向上活動を応援している所もあります。
前者の場合などは、特定の店舗の応援は出来ないと言って断ってしまう選管もあります。確かに行政には公平の原則があるのは事実ですが、同時に、やる気のある市民を応援するという使命もあります。少なくとも、公選法に反しない範囲で出来ることはあるわけです。
これらについても、多くの選管さんではそうした行動の情報発信をしていません。市民や学生がブログやSNSに「こんな事をしました」と言う投稿をして、初めてこちらもそれを知るという事もよくあります。それではしかし、選管として弱いのでないのか?さらに、そうした投稿を見て選管のサイトに行っても何も情報がないのであれば、やはり情報公開度が足りません。
期日前投票所の拡充
やる気の指標で、ひとつ大きな要素となるのが、期日前投票所の拡充です。ショッピングモールや駅中での投票所の開設や、特定の日時に大学や高校に出張型の投票所を設けるなど、昨今では期日前に関する取り組みが増えています。人口や面積当たりの設置数も、ひとつの目安になるかもしれません。
期日前投票所を過度に増やすことは経費の拡大にも繋がるので、必ずしも正解とばかりは言えませんが、有権者に対する利便の向上を考えた時、現状ではプラスの評価をしたい所です(将来的にはネット投票を推進すべきでしょうが)。
特に一部の選管で実施している、移動出張型の投票サービスは、過疎や高齢者が多い地域などで、効果を発揮するのではないでしょうか。
どのように評価をするのか?
啓蒙活動の評価については、データのように簡潔なポイントがないのが悩ましいところです。
それでもいくつか見ていく中で、活動的な選管がやっている行動が似通っている事が分かりました。そこでそれらを類型化し、星取りにするのが良いのはないかと考えています。
しばらくは試行錯誤が続くかもしれませんが、当初は30個程度の項目を作る想定です。
その中には、ノベルティグッズの制作や、有料広告プロモーション、イベントの開催等、予算が必要なものもありますが、それらは自治体の財政状況にも左右されてしまうので、採点の配分を小さくするなども考慮したい所です。
まとめ、見たい部分とは
もろもろ書きましたが、最も見たい部分は…
①まず候補者に関する情報の充実度
②次いで、サイトの性格から言って、期日前投票所のデータの出し方
③そして、やる気がどこまであるかを測る、ユニークな活動情報
辺りとなります。
今後の予定としては、マップの作成に同期させるので、当面の知事選と、状況を見ながら熱気の出そうな基礎自治体。合わせて、年内に概ね10箇所位(月一ペース)でしょうか。
その後、来年2019年の春の統一選でいくつか同時にやってみて、夏の参院選で47都道府県を一気にやって、ランキングする。ということも考えています。
※一人でやるのは大変なんで、手伝ってくれる人も年中募集中です。
※ひとまず、3/11投開票の石川県知事選でテスト的に実施して、4月の京都府知事選からレギュラー実施していきたいと思っています。
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